朝露館について
作者の想い
伝えたいことがある
伝えなければならないことがある
死んだ人間が生き返らない以上…
栃木県益子に窯をもうけ 言葉を土に刻み続けてきた陶芸家がいる
「繁栄」と「平和」のなかで 遠い過去の
無辜のひとたちの不条理な死を想った
その死を悼み
生き返らせることはできないものか
伝えたいどうしても
望みもしない不慮の死を迎えた人たちが生き返らない以上
何を思い 死んでいったのか
彼らの思いを伝えた詩を 言葉を
ひたすら土に彫り続けた…
目と耳をすませば
館内を埋め尽くした陶板から
死者の魂と
作者の祈りの声が聞えてくる…
伝えたいこと 伝えなければならないこと
陶板作家の思いに 私たちの想いを重ねる
私たちのなかの蛍火のような希望に
翼をつける
・オープニングナレーション
死者を悼む
確かに記憶する
硬く重い雰囲気が焼き物から漂う
そこには様々な文字が刻まれている
誰がどんな目的でこの作品を作ったのだろうか
これらの作品を作り続ける陶芸作家に、
この夏(2015年夏)私たちは出会った
・ナレーション 1
栃木県益子に窯を設け、
言葉を土に刻み続けてきた陶芸家、関谷興仁さん
戦争が終わって現在まで希望を探し続けてきた
今の危うい平和の中で遠い過去の不条理な死を想った
・インタビュー 1
こういうこと(戦争)は僕らの中では、
記憶にあっても良い記憶ではないですよね
どうしてもこういうこと(戦争)をないことに
するのは変かもしれないけど
封印しておきたいと日常的にそう思うわけですね
そういうこと(戦争)は封印してしまうと、
やっぱりどんどん小さくなってしまう
最後には無くなってしまうかもしれない
(戦争の)記憶を維持していきたい、
そう思うので伝えていく
戦争は日常的に起こることではないんだけど、
起こったら大変なことになるわけですよ
かつて戦争中で色々なことがあったと、
それを一生懸命ないことにしようとしているでしょ
伝わらないように伝わらないようにしているわけですよね
教科書からもどんどん削除されている
そういう意味では過ちを、きちんと伝えることによって
その過ちを繰り返さないっていうかな
伝えることによって戦争を繰り返さないようにしたい
・ナレーション 2
戦争、それはどちらが勝利したとか、
何人死んだとかで語られることが多い
しかし実際には、一人一人名前のある人が命を落としていた
名前がないのではなく
名前を奪われ、忘れられただけなのだ
だから関谷さんは自分の人生の時間をかけ、
あえて『不明』の作品を作ったのだ
・インタビュー 2
本当に名前さえ分からないままに葬られる
例えば 731部隊のね、『不明』の犠牲者がいるわけですよ
あるいは強制連行されて慰安婦にされた『不明』の
16歳、17歳の娘さんがいるわけだからね
それが自分の妹だったりしたらどう思うか、
もしそれが自分だったらどうだろう
そういう意味でやっぱり…
まあこう話していてもだんだん辛くなってくる…
これには本当に一つ一つの人生があって、
苦しかったり、悲しかったり、
最後は本当に生きたりないで亡くなってしまった
それだけ考えても大変なことだろうと思う
死んでしまった人間にとってその証拠というのは
人間の場合は名前しか残らない
・ナレーション 3
展示の最後に、ひび割れた『希望』の文字があった
・インタビュー 3
僕はやっぱり『希望』はないと思っていた
でも『希望』なしには生きていられないだろう
せめてどこかに言葉だけでもいいから
それで割ってしまったやつを寄せ集めてね、
ここに並べたわけです
・ナレーション 4
何を想い、何に怒って死んでいったのか
彼らの想いを伝える言葉を、そして詩を土に刻む
Thoughts carved on ceramic plates
~To the Victims of Tragedy ~
Mourning the dead, remembering all,
a somber, heavy atmosphere rises from these plates.
Each carries a carved inscription.
Who made these pieces? And why?
We met the artist in the summer of 2015.
And he’s still making them.
・Narration 1
Kojin Sekiya has a kiln in Mashiko, Tochigi Pref.
He is the one carving words into clay.
He’s been seeking hope ever since the war.
In our fragile peace, he recalls the absurd deaths of the past.
・Interview 1
When we remember war,
it's never a good memory, right?
Though we want to seal those memories off,
it’s wrong to pretend there was no war.
If we seal it off, it shrinks smaller and smaller.
It might eventually disappear altogether.
I want to keep this memory alive,
so I keep passing it on.
War doesn’t happen every day,
but when it does, it’s a complete disaster.
During war, the truth is so horrible,
some people do their best to pretend it didn't happen.
Over and over they keep war stories from spreading.
So they've deleted them from the school textbooks.
So today, Japan is about to make the same mistakes again.
From that point of view, handing down the truth
might keep us from making those mistakes again.
I am trying to prevent war by keeping it in memory.
・Narration 2
People always talk about war in terms of
who won or how many people died.
But each person who loses his or her life has a name.
It isn’t that they didn’t have names.
Their names were stolen, passed out of our memory.
Therefore Mr. STherefore, Mr.Sekiya dares to label many pieces “unknown”
and has spent a lifetime doing so.
・Interview 2
People were buried in graves without names.
There were, for example,“unknown” victims of Unit 731.
There were as well “unknown” young girls taken at 16 or 17
to be comfort women.
How would you feel if she were your sister?
What if she were you?
In that sense, well…
Even talking about this, right now, I gradually feel more pain…
They all had a life, painful or sad.
In the end, they died wanting to live longer.
It’s so hard even to think about this.
For the dead, the only evidence of their lives is their names.
・ Narration 3
The exhibition ends with the cracked word “hope”.
・ Interview3
At one point I really thought there was no hope.
But we can’t live without hope.
That word needs to be here somewhere,
so I collected and placed here the pieces I had cracked.
・Narration 4
What did they think? How angry were they when they died?
Kojin Sekiya carves poetry, words that convey their thoughts,
into earth.